Story

Story 03

ポートタウン釧路と
ネーチャーサンクチュアリーの阿寒湖を結ぶストーリー。

北の海に面した港町、釧路と厚岸。
ここには、古くから海とともに生き、
人と自然が寄り添いながら築いてきた祈りと食の文化が息づいている。
信仰と漁、火と潮、アイヌ。
それらが交わり、ひとつの文化を育んできたこの地から、
旅は森と湖の阿寒へと続いていく。

炉端と潮風が育むガストロノミー

釧路のはじまり
― 海と祈りの記憶

時は、1799年。
北の海に、まだ名もない漁場が開かれたころ。
荒波と霧の海に挑む人々が、ひとつの祈りを胸にこの地に立った。
漁場請負人・佐野孫右衛門は、
海の怒りを鎮め、仲間たちの無事を願って、
遠く安芸の厳島神社から御分霊を迎えた。
こうして、釧路の厳島神社は産声をあげたのである。
祀られたのは、安芸の厳島弁財天、海を司る金比羅大神、
豊穣をもたらす稲荷大神、
そして雄阿寒岳・雌阿寒岳を霊峰と仰ぐ阿寒の大神。
その阿寒の大神は、アイヌの人々が古より崇めてきた神でもあった。

和人とアイヌ、異なる文化の祈りが、ひとつの社に重なり合う。
それは、北の大地で共に生きるという新しい時代の始まりだった。
1805年、アイヌがカムイシュマ(神の岩)と呼び敬ってきた聖地に、
ついに神殿が建てられた。
吹き荒れる風も、激しい潮も、幾度もの試練を超えて。
やがて、釧路の海は豊かに実り、
人々は信仰とともに暮らしを築いていった。
この祈りこそが、北の港町・釧路の原点であり、
港町・釧路と自然の聖地・阿寒湖を結ぶ物語のはじまりだった。

釧路 炉端STORY
― 炭火が灯す、人と人のあたたかさ

日が沈むころ、港町・釧路の夜はゆっくりと目を覚ます。
漁を終えた男たちの声、潮風の匂い、そして通りに漂う香ばしい煙。
それが、この街の心を灯す炉端の合図だ。
かつて、農村の人々が収穫を終え、炭火を囲んで語らったという風習。
その炎は、北の港町に渡り、漁師たちの暮らしの中で新しい形となった。
魚を焼きながら語らい、笑い、時に沈黙で酒を酌み交わす。
そこにあるのは、豪華さではなく、人のぬくもりだった。
カウンターの向こうで焼き手が火を操る。
炭がぱちりと弾ける音が、まるで心の距離を測るように響く。
隣の見知らぬ旅人とも、いつの間にか言葉を交わしている。

そして、炉端には欠かせない一献がある。
釧路でただひとつ残る酒蔵「福司(ふくつかさ)」の酒だ。
湯気立つだら燗を口にすれば、炭火のぬくもりとともに、
時間までもが静かに溶けていく。
この街の炉端は、単なる食事の場ではない。
漁師町の記憶、人々の絆、そして北の冬を越えてきた誇り。
すべてが一つの火のまわりで寄り添っている。
炭火の灯りが揺れるたびに、
釧路という街の心が、静かに語りかけてくるのだ。

厚岸 牡蠣STORY
― 海と霧が育てた、一粒の永遠

夜明けの霧が、厚岸の海をやさしく包み込む。
波音も風も、すべてが静まり返るその時間。
海の底では、ひと粒の命が、ゆっくりと息づいている。
この地の名、「アッケシ」はアイヌ語で「牡蠣の多く獲れる場所」。
遥か昔から、人々はこの海に恵みを見いだし、
縄文の頃の貝塚にも、その痕跡が刻まれている。
しかし、豊かさの裏には、幾度もの試練があった。
乱獲、禁漁、大量死滅。
それでも人々は諦めず、海と向き合い続けた。
やがて、一粒を大切に育てるという新しい手法、
シングルシードが導入された。
ロープに吊るされた小さな命は、潮の香りと霧の湿りを吸い込み、

やがて旨味の結晶と呼ばれる「カキえもん」として生まれ変わった。
この厚岸の海は、ただの漁場ではない。
森から流れる清流、ミズナラの樹々、そして濃い霧が、
海とひとつになって命を育む場所。
その自然の循環に呼応するように、
厚岸の大地ではモルトウイスキーが熟成している。
スコットランド・アイラ島にも似た風土の中で、
海の塩気と森の香りが時をかけて交わり、
この土地だけの味わいを生み出していく。
そして、オイスターファーマー・中島均が営む「KAKIBA」。
自らの手で育てた牡蠣を、厚岸ウイスキーとともに振る舞う。
それは、自然への感謝と、土地の記憶を語り継ぐ儀式のようだ。
海と霧と人が共に紡ぐ、
一粒の永遠の物語。
それが、厚岸の牡蠣の真の味わいである。

阿寒から海へ、
そして再び阿寒へ。

阿寒湖の森から流れ出た水は、やがて釧路川を下り、この海へとたどり着く。
祈りと火と食が息づく釧路・厚岸の文化は、阿寒の自然と人の心と通い合いながら、
今も静かにこの北の地をめぐり続けている。

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